HOME階層下がるコラム一覧階層下がるAtlasの新しい方向性コラム ヨーロッパの政治・経済・社会・歴史編階層下がる2016年の地上最高大富豪400人の純資産価値推移

2016年の地上最高大富豪400人の純資産価値推移


世界中でもっとも高い純資産価値を持つ400人の大富豪の資産価値の日々の変動を示すグラフを見ると、6月24日の日次では史上最大の1279億ドル(約13兆円)の評価損が出ています。もちろん、金持ちが少し資産を失えば、自動的に貧乏人が豊かになるわけではありません。しかし、もともと乏しい貧乏人全体の取り分がさらに圧縮される中で、少しでも多くの稼ぎを得ようと貧乏人同士が奪い合うというこれまでの状態を抜け出す展望は開けてきます。

国民投票前日まで展開されていた残留派の大宣伝は、イギリスがEUを離脱すれば、アメリカとユーロ圏諸国をつなぐ結節点というイギリス金融業界の優位性は極端に弱まるというものでした。しかし、実際にイギリスのEU離脱が本決まりになった時点で、ロンドンが国際金融市場に占める地位が揺らぐ兆候は現れているのでしょうか。

たとえば、イギリスのEU離脱論争の全過程を通じて、残留派からEU離脱のコストについてさまざまな恐怖をあおるキャンペーンが行われていましたが、しっかりしたデータにもとづく主張は、金融業界の利害に関するものが圧倒的に多かったようです。この事実自体が、残留派による議論の多くは現体制の維持に多くの利益を見出していた金融界という利権集団の立場を色濃く反映したものだったことを示唆しています。

さらに、ゴールドマン・サックスの全雇用者中18%はイギリスで働いています。ロンドンからヨーロッパ諸国への出張の手続きが多少煩瑣になる程度のことで、この優位が揺らぎ、外資系金融機関の雇用者が大勢パリやフランクフルトに配置転換されるといったことが起きるのでしょうか?

それはほとんどないでしょう。イギリス、中でもロンドンの金融センターとしての重要性は、アメリカ英語しか話せないアメリカ人とヨーロッパ諸言語との通訳をできる人間の集積地として、ロンドンに勝る都市はないことにあります。言語能力の低さではアメリカ人と日本人が双璧ですが、日本人はそれを自分の弱点としてなんとか克服したいと思っています。

一方、アメリカ人は世界中でアメリカ英語が通じないことのほうが不都合だと考えていて、まったく自分の努力によって改善しようとしません。だから、アメリカ英語とヨーロッパ諸言語の通訳センターとしてのロンドンの重要性は、アメリカが世界覇権を他国に譲らないかぎり、あまり低下しないでしょう。

今回の顛末についてまとめてみると、金融業界、国家官僚、EU官僚、大富豪といった特権集団をのぞけば、イギリス国民にもEUに残っている諸国の国民にも、マイナスの影響はほとんどありません。EU官僚による加盟諸国の国内問題への干渉が多少弱まることになれば、プラスの影響はあり得るでしょう。

しかし、ついに国民投票による決着によって金融利権集団が敗北を喫するまでの経緯には、イギリス経済の金融業依存度の高まりが、大手金融機関や一流企業にとって一方的に有利で、一般国民には不利だったことが如実に表れています。

webフォームから体験申込みをする方はこちら

TOPへ戻る

Copyright Atlas Corp. All Rights Reserved.