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ヨーロッパから我先と逃げ出す投資家たち② ロンドンとアムステルダムの場合


ロンドン中心部のオフィス竣工床面積は、明らかに2007~2008年の国際金融危機のまっただ中で企画された分が完成の運びとなる2011~2013年には低迷していました。そして、国際金融危機からの回復の兆しが見えた2009~2010年の企画分が本格的に稼働した2014年には急増していました。

2015年竣工分には、かなり明確に2011~2013年のユーロ圏ソブリン危機の影響が見て取れます。しかし、結果的にユーロ圏ソブリン危機は懸念されていたほど実体経済への悪影響がなかったということで、2016年以降の竣工予定物件は2018年までかなり大幅に伸びつづけることになりました。

その時点で約2割しか竣工していなかったのは季節的に当然として、着工済みだが貸与契約ができていない床面積が約6割、着工済みで貸与契約も確保しているものが約2割しかなかったのです。

2017年竣工予定の着工済み物件の中では貸し先が決まった床面積のほうが、空室のまま建設中の床面積より多いですが、2018~2019年には貸し先未定のまま竣工計画だけは確定してしまっている床面積が多くなります。

先のことほど未確定要因が大きくなるので、ある程度までは当然の傾向で済ますことができます。しかし、そもそもロンドンというかなり成熟度の高いオフィス市場で、これほどの床面積の純増を吸収しきれるのか、それともテナントを失って解体されたり、他用途に転用されたりする床面積がかなり大きくなるのかは、懸念要因でもあります。当然、そこまで変化を望まない貸主の中には、賃料を下げることでテナント確保を目指すところも多いはずです。

ロンドン中心部で建設工事中のオフィス床面積が、2014年第3四半期の700万平方フィート(約65万平米)強を底に、わずか1年半で1400万平方フィート(約130万平米)へと倍増近いペースで伸びていることがわかっています。今回のミニバブルで貸し先を決めないまま開発に取りかかってしまった物件は、そうとう稼働率が低くなったり、予定賃貸料に比べて大幅な値引きを迫られたりするものが多くなるでしょう。

一方、アムステルダムの場合、派手なバブルを起こしたのはオフィスビルではなく、住宅でした。2013年末には22万ユーロ(約2500万円)まで下がっていたアムステルダムの新築住宅平均価格は、わずか2年2ヵ月後の2016年2月には30万ユーロ(約3400万円)弱まで上昇していました。36%近い大暴騰です。これがオランダ国民の所得が急上昇したために、国内最大でもあり、おそらくはもっとも高額でもあるだろう住宅市場の値上がりを招いたというわけではありません。

アムステルダム地域の住宅販売戸数は、大底の2013年第1四半期の1500戸弱から、2015年第1四半期の2000戸強に回復したあと、横ばいでした。それでも価格が2016年2月にかけて大暴騰したのは、2013年第1四半期のピークで8000戸前後に達していた販売中在庫が、2016年第1半期には2000戸強まで大激減していたからでした。

四半期ごとに売上に立った戸数以上の在庫減が生じているので、竣工して市場に出てくる新築住宅の数も減少しており、売れないまま市場から取り下げられていることが推測できます。おそらくは当分市況が回復しないと見て、比較的長めの契約で賃貸に出してしまったのでしょう。つまり、ロンドンのオフィス市況も、アムステルダムの新築分譲住宅も、薄氷を踏むような危うい基盤の上でバブルだったのです。

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