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ヨーロッパから我先と逃げ出す投資家たち③ フランス、スペイン、ギリシャの場合


西欧・北欧諸国では世帯年収がわずかながらも上昇しているのに対し、南欧のいわゆるPIGS諸国では下落しているようです。やはりヨーロッパ諸国全体が陥った経済停滞の深刻さを非常にはっきりと表れているようです。

2009年~2014年までの丸5年間、ヨーロッパで一番世帯年収の伸び率が高かったスウェーデンでさえ、5年間の累計でわずか6.2%の伸びでした。2位のドイツが5.8%、3位のフランスが3.8%、先ほど最大の不動産市場で住宅価格が急騰していると指摘した4位のオランダにいたっては、0.4%の伸びに過ぎません。

もし、これが名目ベースだったとしたら、スウェーデンとドイツは実質世帯年収でもかろうじて伸びていたでしょうが、フランスとオランダは明らかに減少していたはずです。そのオランダのアムステルダムで、住宅価格があれほどの急騰となっていたのです。どう考えても、いつはじけてもおかしくないバブルとしか思えません。

もちろん、西欧や北欧でもあまりよくはないですが、南欧諸国の就労環境はとくに若年層にとってすさまじく悪いようです。スペインでもギリシャでも、いまだに25歳以下の失業率は45%を上回る高さになっています。

のちにユーロ圏のオリジナル・メンバー国間で為替レートが固定されたのが1998年12月31日、そして翌日に当たる1999年1月1日には、メンバー諸国間で国際的な取引の決済計算上の仮想通貨としてユーロが使用されはじめました。

ユーロ導入前に33.4%だったスペインの若年層失業率は、フル導入後14年間で45.8%に上がっていた。また、導入前には29.9%とぎりぎり30%を下回っていたギリシャの若年層失業率は、フル導入後14年間で48.9%と50%目前まで大暴騰してしまいました。

さらに、ユーロ圏全体でも若年層失業率は20.2%から22.1%へと微増しています。ユーロの導入は、圏内諸国の経済成長率や経常収支にさらに大きな格差をもたらすとともに、若年層失業率を全体として押し上げてしまったのです。直近5年間の世帯平均年収ベースではぎりぎりの勝ち組に滑りこんでいるフランスでも、失業率推移はユーロ導入後も非常にけわしい道のりだったようです。

フランスの失業率が近年では最低の7.1%まで低下したのは、2008年第1四半期のことでした。しかし、その頃にはすでに、アメリカのサブプライムローン・バブルの崩壊に端を発した国際金融危機は勃発していました。

その後、最初のピークは2010年第1四半期の9.6%まででしたが、2011年以降顕在化したユーロ圏ソブリン危機の影響も受けて、2012年第4四半期以降は一貫して2ケタの失業率が続いています。

フランス政府がこの失業率上昇にまったく無策でいたわけではありませんでした。近代経済学の世界でケインズ革命が定着してからの定石どおりに、フランス政府は財政出動によってこの失業率の上昇に対抗しようとしました。1980年代以降ほとんど中だるみもなく政府による市場経済への介入を拡大しつづけてきたといったほうが正確かもしれません。

フランスの公的部門の総債務は、1980年にはGDPの20%をわずかに超える程度にとどまっていました。しかし、1985年には30%台乗せ、1990年には30%台半ば、1995年には50%台半ばへと上昇しました。2000年には一時到達していた60%台を割りこんでいましたが、2005年には60%台半ば、そして2010年には80%台乗せと、着実に拡大しつづけてきました。直近の2015年には90%台の半ばに達し、100%を上回るのは時間の問題となっています。

世界中の先進国で国家債務がGDP総額を上回った国は多く、国家債務の対GDP比率というのは、ストック概念である債務総額とフロー概念であるGDPを対比しているので、これを見ただけでは、ほんとうに特定の国の政府による市場経済への介入が高水準に達しているかどうかは判断できません。

毎年の政府支出のその年の税収に対する超過額はそれほど巨額ではないですが、何世代も前から莫大な国家債務が根雪のように積もっていたので、国家債務の対GDP比率は例年高水準で推移しているということもあるからです。

しかし、フランスのようについ35年前には国家債務はGDPの20%強にとどまっていたのに、直近では100%近くに達しているというような国では、毎年の政府による市場経済への介入自体が税収を大きく上回っていること、すなわち政府による経済介入自体が大きいことは間違いありません。実際に、フランスは国家による市場経済への干渉という点で、北欧以外では類例のないもうひとつの特徴を持っています。

フランスの政府支出の対GDP比率は、1983年にはすでに50%を超えていました。つまり、個人・企業を合計した民間部門の支出より政府部門の支出のほうが大きかったようです。その後、第2次オイルショックと呼ばれたOPEC諸国による原油価格の再引き上げが失敗に終わったことが明らかになるにつれ、フランス政府支出の対GDP比率も下がりつづけ、ちょうど日本で不動産・株価バブルが頂点まで膨張し、そして崩壊した1989~1990年には50%を割りこんでいました。

だが、1993年には55%弱となり、国際金融危機直後の2009年には56%を上回り、以降一貫して55%を超える水準に高止まりしています。今や数少ない正統派社会主義国と、福祉型社会主義を標榜する北欧諸国以外では、これほど政府による支出のGDPに占める比率が高い国はないだろう。問題は、この非常に大きな政府による市場経済への介入が、国家存立の基盤に社会主義を掲げる国々ではとうてい容認できないはずの成果をもたらしていることです。

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