さて、課題達成能力を上げるために知識を増やそうと思った時には、どんな知識を増やすかと同時に、その知識を自分のものにするにはどうしたらいいかということも考える必要があります。そのために大切なことがいくつかあります。
まず、人は新しい知識をすでに自分が持っている知識に何らかの形で結びつけて学ぶものだということです。丸暗記は好きな人も嫌いな人もいると思いますが、いずれにしても丸暗記した知識はしばらく使わないと忘れてしまいます。これは、丸暗記した知識は、あなたが既に持っている知識と頭の中で結びつけられていないからです。
何か新しい知識を覚えておこうと思ったら、ちょっとそれについて考えてみてください。
例えば、日本語ではこうでも○○語ではこうというように、自分の知っていることと、新しい知識を比較してみることもできます。また、知識をパーツに分解して、自分の知っていることに還元することもできます。例えば、unbelievableは、unとbelieveとableからできている、だから信じられないという意味だというようにです。
物語を作ったり、言葉遊びをしたりすることもできます。例えば、人の足は2つあるからleg(レッグ)というのだというような感じです。視覚的イメージのほうが覚えやすい人は、足に数字の2が描いてある絵を思い浮かべてもいいかもしれません。あなたにとってその知識を思い出す手がかりになることなら何でも構わないのです。
次に大切なことは、復習することです。エビングハウスという心理学者の有名な実験では、人は覚えたことを次の24時間で急激に忘れていくということです。しかし、復習を重ねることで忘却率は次第に下がっていくのだそうです。つまり、学習の直後に何回か復習をしていくと、そのうち忘れなくなるということです。
自分で思い出す努力をすることが、忘れるのを防ぐという主張もあります。つまり、復習と言っても、やり方が大切だということです。例えば、単語を覚えるのが課題だとしましょう。
日本語と○○語の単語リストがあったとして、毎日それを眺めるというのは、復習をしていることはしていますが、自分で思い出す努力はしていません。試しに、単語リストの○○語の側を何かで隠してみましょう。
日本語を見て、○○語の同じ意味の単語を言ってください。これをするには、自分で○○語の単語を思い出す必要がありますね。たぶん皆さんは、学校の試験勉強のために、こんなことをしたことがあるだろうと思いますが、このようなちょっとした工夫が結果を大きく変えることもあるのです。
ここまでは新しい知識を頭の中に取り入れるための工夫でした。しかし、外国語の知識を使って何かをするためには、その知識をすぐに頭の中から取り出せるようにしておく必要もあります。そのために必要なことが二つあります。一つは、整理するということす。
タンスの引き出しにお気に入りの赤い靴下をしまうと思ってください。適当に入れてしまったら、たぶん次に見つけようと思った時には、すべての引き出しをあけてみなくてはいけないことになりますね。
しかし、靴下はこの引き出しとか、赤いものはこの引き出しとか、何らかのシステムを持っていたら、探すのはずっと簡単になります。知識も同じです。また、単語を覚えることを例にとりますが、ビギナーのうちは、実際の出来事ごとに整理するのが覚えやすいかもしれません。
例えば、フランス語で言うと「昨日は私の誕生日(anniversaire)で、私は赤いドレス(roberouge)を来て、友だちが焼いてくれたケーキ(gâteau)のろうそく(bougies)を吹き消した」というようにです。ここでは、誕生日のお祝いという出来事に、5つのフランス語の単語を結びつけて覚えようとしています。少し知っている単語の数が増えてきたら、カテゴリーごとに整理し直すといいかもしれません。例えば、色(couleur)、赤(rouge)、ピンク(rose)、紫(violet)、青(bleu)というようにです。
もう一つ大切なことは、繰り返し取り出せば、取り取り出すのが速くなるということです。
例えば、誰かが話すのを聞いてそれを理解するためには、話すスピードと同じ速さで、話されている言葉の意味を頭の中から探してこないといけません。人が話す速度はとても速いので、これには慣れが必要です。
読んだり書いたりは自分のペースでできるので、話したり聞いて理解する時ほどスピードが問題になることはありませんが、それでも実生活の中で読んだり書いたりするためには速さが必要になります。
スピードを上げるためには、繰り返し練習することが役に立ちます。知識を話すために使いたかったら話すこと、書くために使いたかったら書くこと、というように、目標にしているスキルと同じことをやることが大切です。