外国語ができるということはどういうことでしょうか?あなたはひょっとして、日本語でできることのすべてが日本語でするのと同じようにできるようになることを目指していませんか?これはかなり大変なことです。
外国語でどんなことでもほぼ困らずにできるようになるのに何年かかるかを計算した人はおそらく世界のどこにもいません。何時間のレッスンを受けたら、ここの試験のこのレベルに合格するとかいう基準はありますが、それらの基準は一人一人の学生がレッスン外にどのくらいの時間勉強しているかは考慮していません。
それでは、子どもの場合はどうでしょうか。子どもは小学校入学前に母語の発音や文法体系、そして日常生活で使用するかなりの語彙を習得しています。子どもは起きている間はすべての時間を言葉を学ぶのに使えます。
生まれてから6歳まで1日に起きている時間を平均12時間とした場合、子どもは土日に勉強を休むということはしませんから、12時間かける365日で、1年間の学習時間は約4000時間になります。つまり6歳の誕生日までには約25,000時間を言語学習に費やしていることになります。もちろんこの中には子どもが言葉に注意を向けていない時間も含まれています。
また、大人は言葉以外の知的能力を使って学ぶことができるので、子どもよりは学習が進むのが速いのです。そういったことを考慮しても、成人が外国語でどんなこともほぼ困らずにできるようになるためには、とても長い時間がかかるということは推測できます。
最近聞く話ですが、ドイツの心理学者エリクソンの研究によると、どんな分野でも、秀でた人たちは「才能」を開花させるまでにだいたい1万時間を練習に費やしているそうです。私は、この1万時間という数字が、外国語でどんなことでもほぼ困らずにできるようになるための、ひとつの基準になるかもしれないと思っています。
1万時間とは、週に5日、一日4時間何かを練習したとして、約10年かかる量です。練習の中には、友だちとおしゃべりすることも、余暇にテレビを見ることも、仕事をすることも含まれるでしょうが、それでも長い時間には変わりありません。
日本語でできることのすべてが日本語でするのと同じようにできるようになりたいと思ったら、目標達成は遠い将来ということになります。それまでの間、やる気を持ち続けるのはなかなか大変です。多くの人が外国語の学習を途中であきらめてしまうのは、そのせいかもしれません。
しかし、日本語でできることのすべてが日本語でするのと同じようにできるようになる必要は本当にあるのでしょうか?
あなたが外国語を学ぶ目的はなんですか?海外旅行に行って、レストランで好きな食べ物を注文することですか?それとも、日本語の読み書きができない海外に住むお孫さんに現地の言葉で手紙を書くことですか?お気に入りの歌手の歌をカラオケで歌えるようになることですか?残念ながらこれらは「日本語でできることのすべて」ではありません。
もちろん、あなたはもっと高い目標を目指しているかもしれません。留学して大学院に入るとか、外国語で仕事をするとか。でも、これも「日本語でできることのすべて」でないのです。
あなたは日本語で恋愛も子育てもできるはずだし、テレビのお笑い番組を見て笑ったり、自分で冗談を言ったりもできるはずです。外国語学習は、まず自分の目的に合わせて、目標を絞り込みましょう。そうすることで、目標達成をより近い将来に持ってくることができるようになるのです。